「ニッポンの裁判」:名誉毀損とスラップ訴訟

 元裁判官の瀬木比呂志氏が、「絶望の裁判所」に続き、「ニッポンの裁判」を上梓。2015年1月16日、講談社現代新書から刊行されました。
 第4章で日本の名誉毀損罪について、第5章でスラップ訴訟が取り上げられています。

 ・唖然、呆然、戦慄、驚愕! 日本の裁判は本当に中世並みだった! 『ニッポンの裁判』著者・瀬木比呂志氏インタビュー
  
 名誉毀損損害賠償請求訴訟の認容額の高額化が政治的圧力によるものだったと指摘し、経緯の事実関係が記載されています。この問題は過去にも何度か指摘され、私も少し読みましたが、瀬木氏によれば状況はますますひどくなっているそうです。今の、偏向した政治が露骨に「言論規制」の方向を向いているので、当分は変わらないでしょう。そういう時代のど真ん中で、私は訴えられてしまったらしい(≧▽≦;)。
 訴えられてから、警察や検察、裁判所に対して、おかしいと思うことは幾つもあったし、マスメディアの名誉毀損裁判の報道を見ていても、市民感覚とかけ離れた判決が少なくなかった。

 「フライデー 2010年7月9日号」が、北沢元防衛相の暴力団関係者との交際を報道し、名誉毀損で訴えられたケースの判決内容は(2013年12月24日に最高裁が講談社の上告棄却、二審判決が確定)、随分と違和感を残します。
 元防衛相側h「記事の主要部分は全て虚偽だ」と主張し提訴。しかし判決は、元防衛相が1975~85年頃、暴力団関係者から飲食の提供を受けたり、旅行費用を負担してもらった事実を認定。その上で、記事中の「恐喝事件の服役を終えた暴力団関係者に『仕事を紹介する』と約束した」部分は、立証不十分として斥け、名誉毀損の成立を認めたものです。
 *北沢元防衛相が勝訴 講談社に330万賠償命令

 市民感覚では、免責事由は充たしていると思うし、元防衛相側が最初に嘘を述べ、事実否認をした事実について違法性が問われないのも納得いかない。警察や検察も事実誤認や枝葉末節の小さな間違いは普段にしている一方で、裁判所がメディアや個人ブロガの情報発信に対し、完璧な「無謬性」を求める傾向は異常です。

 瀬木氏は、裁判所が名誉毀損の免責を容易には認めなくなっていると指摘。


 さらに問題なのは審理、裁判のあり方です。

 たとえばアメリカでは、この種の訴訟については、表現の自由との関係から原告にきわめて高いレヴェルの立証が要求されており、2000年以前の日本の判例にも、同様の考慮はありました。

 ところが、近年の日本の判例は、被告の、記事の真実性、あるいは真実であると信じるに足りる相当性(たとえ真実ではないとしてもそう信じるに足りる相当な理由があれば免責されるということ)の抗弁を、容易なことでは認めなくなってしまいました。その結果、メディアの敗訴率は非常に高くなり、「訴えられればおおむね敗訴」というに近い状況となっています。

 それが、「最近は、質の高い調査報道でさえ訴えられれば名誉毀損訴訟で勝つことは至難」という状況なのですこれは、認容額の一律高額化以上に大きな問題です。いわば、「知る権利」の基盤が裁判所によって掘り崩されているわけです。

 「日本の裁判所は『憲法・法の番人』ではなく『権力の番人』である」という傾向は昔からあったのですが、それでも、ここまで露骨なことはさすがにかつてはなかったような気がします。

 また、こうした訴訟は、たとえ被告が勝つ場合であっても、莫大な金額の損害賠償請求を起こすことだけで、ライターや出版社を意気阻喪、萎縮させる効果があります。



 *参照:
  ・情報誌「選択」 2015.01.29付『雑誌を殺す裁判所 名誉毀損訴訟という「言論弾圧」
  ・2001年(平成13年)5月16日の第151回国会衆院法務委員会議事録
   >当時の冬柴鐵三・公明党幹事長が大々的に、名誉毀損の賠償額引き上げ発言。

 イギリスの名誉毀損法も日本と似て、立証責任は被告側に丸投げされていましたが、国内外の改正圧力を受け、2013年に改正されました。かたや、日本は真逆の方向を向き驀進中。「言論封殺」は政府、大企業が結託し主導しています。マスメディアはどんどん追い込まれ、自主規制は強くなる一方。
 *イギリスの2013 年名誉毀損法
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