「虚構の法治国家」:美濃加茂市長と詐欺師と検察

 郷原信朗弁護士のブログ、「美濃加茂市長無罪判決 ~極めて当然だが決して容易ではない司法判断~ 2015年3月7日」から。
 この事件は詐欺の常習犯である一人の男の証言に依存し、その証言の信憑性を疑わせる、あるいは真実性を否定する複数の他証言を排斥して起訴に至ったケースです。で、先日、無罪判決が出たのですが、被告代理人の郷原氏は記事の中で、無罪判決の正しさは疑いの余地のない事件だが、判決が近づくにつれ、裁判所が検察の面子を潰すような判決を本当に出せるのかと疑心暗鬼になってきたという。

 一般市民は”そんな馬鹿な!”と思いますが、郷原氏はヤメ検で、検察の体質を熟知している、裁判所の根深い検察依存体質も熟知している。検察の冤罪が、やすやすと司法の有罪判決に直結していくことも知っているわけです。「99.9%を超える高い有罪率」は、ソビエト連邦時代のロシアや中国共産党政権下よりも高い、異常な数字。そういう数字が生まれてくる日本の精神風土の特異性について、私達、日本人社会は客観的に認識しているとはいい難い。欧米とは異質な風土です。欧米主導で発達してきた社会制度をそのまま形だけ拝借してきても、内部から見えない形で蝕まれていき、あっという間にダブルスタンダードで機能するようになる。だから、内部にいる人間でないと実体が分かりにくい社会です。

 元検察官の郷原氏と元裁判官の森炎氏の対談集が、タイトルの「虚構の法治国家」です。今年1月に出版されたそうです。
 『 その中で、森氏は、刑事裁判官の「検察の言いなりになる、というより、積極的に、検察にもたれかかりたいという精神性」「根深い依存意識」を指摘し、その「検察にもたれ込む裁判所」が刑事司法の虚構の構図の中心だと、いみじくも述べている。』

 森氏は以前から、司法の実体に迫る複数の著書があり、裁判官の「パノプティコン化(垂直的管理)」を指摘しています。そう指摘されると、”えー裁判官も!”と思う一方で、裁判官も人間で、日本社会の一員なら不思議はないと思い返すほど、パノプティコン化は日本社会の至るところに浸透しています。内面的な自主規制だから、外部から手をのばして変えていくのは難しい。むしろ逆ですよね、日本人社会では「空気を読む」のが、一つの良識と見做されている。
 一般市民は、一生の内、一度も裁判を経験しない人の方が多いから、裁判所に対し非常にナイーブな漠然としたイメージしか持っていません。裁判所や検察に対する幻想がある。 裁判所は正義を追及してくれる「場」と信じて疑わないし、検察や警察の捜査力に大しても、無邪気な信頼感を持っている。しかし、「現場」の弁護士で、当局の捜査力を当てにしてる人はいません。また、弁護士という実務家は。検察相手に「勝率ゼロ」の戦いを挑むのが仕事じゃないから、最初から情状酌量を計算する人の方が多いらしい。

 美濃加茂市長の受託収賄疑惑事件の地裁判決文は、郷原氏によれば次のようなものだった。


 『中林のような会社経営の経験があり、また、金融機関を相手として数億円の融資詐欺を行うことができる程度の能力を有する者がその気になれば、その内容が真実である場合と、虚偽や誇張等を含む場合であるとにかかわらず、法廷において具体的で詳細な体裁を備えた供述をすることはさほど困難なことではない。

 加えて、本件では、中林は、平成26年10月1日の第2回公判期日及び同月2日の第3回公判期日で実施された証人尋問に臨むにあたり、検察官との間において相当入念な打ち合わせをしてきたものと考えられる上、隣房者との間で対質の方法により行われた第7回公判期日で実施された証人尋問に臨むにあたっても、検察官との間で6,7回に及ぶ打合せを行っていたというのであるから、公判廷において、客観的資料と矛盾がなく、具体的かつ詳細で不自然かつ不合理な点がない供述となることは自然の成り行きといえる。

 と述べて、中林が関係資料に整合するように供述を整えた可能性を指摘した。』

 『 今回の判決では、中林の贈賄供述について、そのような一般的な供述の信用性の要素は認められるとした上で、中林と検察官とが「入念な打合せ」をしていることなどから「具体的で詳細な体裁を備えた供述をしている可能性がある」として、「供述の信用性が供述者によって作り出されている疑い」を指摘している。

 そして、そのように疑う根拠に関して、判決の最後に、「中林の虚偽供述の動機の可能性に関する当裁判所の判断」という項目を設け、

 捜査機関の関心を他の重大な事件に向けることにより融資詐欺に関するそれ以上の捜査の進展を止めたいと考えたり、中林自身の刑事事件の情状を良くするために、捜査機関、特に検察官に迎合し、少なくともその意向に沿う行動に出ようとすることは十分にあり得るところである。』



 判決は、中林の供述書の整合性は書面上のもので、虚偽供述の疑いがあると認定している。
 検察の起訴事実は唯一、中林の供述に依存していた!ところが中林は典型的な詐欺師なんですね、「10の金融機関から約4億円もの融資詐欺」を働き、実刑判決をくらっています。信用出来る人間ではない。市長の弁護団が、中林の『金にまつわるいかがわしい過去』を掘り起こした。詐欺の常習犯、病的な嘘つきです。
 ”たった一人の証人”は、はなはだ信用性に欠ける人物で、その上、お喋りだった!拘置所で知り合った男に、検察とのやりとりを書き綴っていた!男はその一連の手紙を藤井市長に転送した!正しいことをなさいましたです。
 手紙は公判に提出された。
 *美濃加茂市長“収賄裁判”で疑惑の証言者が検察との協力関係を手紙に綴(つづ)っていた!

 そして無罪判決。
 判決確定と思いきや、3月18日のNHKが検察控訴を伝えてるー!ヾ(≧へ≦)〃 
 *組織の面子にこだわり「検察史上最悪の判断」を行った大野恒太郎検事総長
  「美濃加茂市長無罪判決に検察控訴の方針」は、「妄想」か「狂気」か


美濃加茂市長の無罪判決 検察が控訴
NHK 3月18日

 岐阜県美濃加茂市の市長が受託収賄などの罪に問われた裁判で名古屋地方裁判所が無罪の判決を言い渡したことについて、名古屋地方検察庁は「現金を渡したとする業者の供述の信用性を否定した裁判所の判断には誤りがある」などとして、控訴しました。

 岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長(30)は、市議会議員だったおととし、浄水設備の導入を巡り便宜を図った見返りなどとして、名古屋市の業者から現金合わせて30万円の賄賂を受け取ったとして、受託収賄などの罪に問われました。
 藤井市長は一貫して現金の受け渡しを否定し、今月5日、名古屋地方裁判所は「現金を渡したとする業者の供述は臨場感に欠けて疑問があり、現金の受け渡しがあったと認めるには合理的な疑いが残る」として、無罪の判決を言い渡しました。
 これについて、名古屋地方検察庁は「業者の供述の信用性を否定した裁判所の判断には誤りがある」などとして、18日、控訴しました。
 今後、2審の名古屋高等裁判所で改めて審理が行われます。
.
極めて不当だ
 検察が控訴したことを受けて、藤井浩人市長と弁護団が名古屋市内で記者会見しました。
 藤井市長は「控訴の連絡を受けて驚いた。1審の公正な判断で潔白だという結論が出ている。裁判が続けば市民の心も晴れないうえ、市長としての仕事に影響が出るかもしれず悔しい」と話しました。
 弁護団の郷原信郎弁護士は「控訴しても判決が覆らないのは明らかで、極めて不当だ。メンツにこだわっただけにしか見えず、検察に対し控訴を取り下げるよう要請した」と話しました。


 
 検察という組織はここまで異常なもんなん?
 「検察の無謬性」なんか、「原発の安全性」と同じで、閉鎖的な組織の共同幻想でしかない。外部はそんな幻想は共有していない。面子にしがみつけばしがみつくほど、面子を失うことになる。
 で、気になるのは司法判断。
 控訴審の担当裁判官が、控訴に検察の意地やら面子やらを読み取った時、その意地に迎合してしまうのか?”きわめて当たり前の”地裁判決を支持するのか?控訴審判決が原審判決を覆すようなら、「絶望の裁判所」だ。
 
 法廷を舞台に、裁判所、検察、弁護士で構成される世界は、一般市民に愛想をつかされつつある。
 美濃加茂市長に対する犯罪捏造事件は、検察が反社会的人格の詐欺師と結託して、犯罪と無縁の普通の市民を陥れようとするものに見えるが、類似したことは私も経験した。警察や検察は、意外と反社会的な連中に甘く、堅実な一般市民の被害には無関心である。恐ろしく無関心といっていい。
 普通に倫理観や社会規範に基づいて暮らしている一般市民より、権力を持った組織にはヤクザな連中のほうが使い勝手がいいからかもしれない。
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Re: 拓建 代表清算人様

 いえ、私自身が弱きものでして、名誉毀損で訴えられ、現在裁判所提案の和解協議中です。i-101
 
 貴ブログを少し拝見しましたが、大変な裁判をなさっていますね。私は会社運営の事等はまったく不案内で、知識もございませんので、よく分からないのですが、追々少しずつ拝見させて頂きます。

 コメントを有難うございました。最初のコメントは削除してしまい申し訳ありませんでした。
 私は拓建 代表清算人様が記事をリンクして下さったので、アクセスが増えたとばかり思っていましたが、八田隆氏のFBにもリンクされ、最後に郷原氏のツイッターに気付いた次第です。
 コメント入れて頂かなかったら、多分、気付かないでしまったと思います 笑い。
 
 今後とも宜しくお願い致します。

No title

小職のブログへコメントを残していただき、有難う御座います。小職自身が本人訴訟で公共行政主体と争っているので、司法に関係するブログ記事やツイッターの、公共行政に関する問題や、司法に関する問題を取り上げている記事を、素養を培うために色々と参考とさせて頂いておりますが、その中で貴ブログの当該記事が、郷原信朗弁護士のブログで紹介されておりましたので、自身のブログに転載させていただいたもので御座います。アクセス数が増えたのは、きっと郷原様のツイッターに掲載された貴ブログの当該記事にご関心を寄せる方々が多く居られた結果であると思います。弱きものへ手を差し伸べようとする、又は関心を持っていただくよう発信する貴ブログのご姿勢には頭が下る感想を持ちました。
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